家づくり基礎知識

【収納の盲点】作って良かった収納・いらなかった収納から学ぶ失敗しない収納計画

【収納の盲点】作って良かった収納・いらなかった収納から学ぶ失敗しない収納計画

注文住宅の間取り検討やリフォームの際、多くの人が「とにかく収納を多く作れば安心」と考えがちです。しかし、実際に暮らし始めてみると、「作ったけれど全く使っていない収納」や「ここにこれを作っておけば良かったと後悔する収納」が数多く浮かび上がってきます。

収納計画の失敗は、単に空間が無駄になるだけでなく、日々の家事動線を悪化させ、散らかりやすい家を作る原因になります。本コラムでは、住まい手のリアルな経験談から導き出された「作って良かった収納」と「いらなかった(失敗した)収納」の実例を徹底分析し、住んだ後に後悔しないための実用的な収納計画の立て方を解説します。

1.作って本当に良かった収納

「作って良かった」と評価される収納に共通しているのは、「生活動線上にあり、出し入れのハードルが徹底的に低いこと」です。

①玄関直結の「ウォークスルー型シューズクローク(土間収納)」

従来の「靴を脱いでから片付ける」下駄箱ではなく、玄関から土足のまま通り抜け、室内へ繋がるウォークスルー型の収納です。

理由: 外から帰ってきて、コートを脱ぐ、鞄を置く、ベビーカーやゴルフバッグを片付ける、という一連の動作が室内に汚れを持ち込まずに完結します。特に花粉や雨の日の濡れた上着をリビングに持ち込まずに済む点が、現代のライフスタイルに非常にマッチしています。

② キッチンの「浅型・横ワイドなパントリー(食品庫)」

奥行きが深く、何でも入る大容量のパントリーよりも、奥行きが20〜30cm程度と浅く、一目で全体が見渡せるパントリーが高評価を得ています。

理由: 缶詰やレトルト食品、調味料のストックが「一目瞭然」になるため、買い過ぎや賞味期限切れを防げます。また、扉を開けてワンアクションで目的の物を取り出せるため、調理中のタイムロスが劇的に減ります。

③洗面室近くの「ファミリークローゼット」

家族全員の普段着や下着、パジャマ、タオル類を1カ所に集約した収納スペースです。

理由: 「洗濯物を干す・乾かす→畳む→各個室のクローゼットへ運ぶ」という重労働のうち、「運ぶ」プロセスをほぼゼロにできます。洗面室や脱衣室、ランドリールームの隣に配置することで、入浴時の着替えの準備もその場で完結し、家事動線が劇的にショートカットされます。

④リビングの「隠せる壁面・カウンター下収納」

リビングは家の中で最もモノが集まり、散らかりやすい場所です。ここに爪切り、薬、書類、充電器などを収める浅い収納を作ったケースです。

理由: テーブルの上に物が置きっぱなしになるのを防ぎ、扉付きにすることで急な来客時でも生活感を一瞬で隠すことができます。

2.作って後悔した・いらなかった収納

一方で、「良かれと思って作ったのに、お荷物になってしまった」という収納も存在します。その多くは、「広さや深さだけに目を奪われ、使い勝手が置き去りになった収納」です。

①奥行きが深すぎる「押し入れサイズ」のクローゼット

洋室のクローゼットや中段のある収納で、奥行きを90cm(押し入れサイズ)にしてしまうケースです。

理由: ハンガーに掛けた洋服の奥行きは通常50〜60cm程度です。90cmの奥行きがあると、手前や奥にデッドスペースが生まれます。奥に収納したモノは存在自体を忘れ去られ、手前にモノを置くと奥のモノが取り出せなくなるという、「開かずの収納」を生み出す典型例です。

②はしごで昇降する「ロフト・グルニエ・固定階段なしの小屋裏収納」

天井高を活かしたロフトや、屋根裏の収納スペースです。

理由: はしごや急な階段を使って、重いモノや大きいモノを運び上げるのは想像以上に重労働です。若いうちは良くても、年齢を重ねるごとに昇降が億劫になり、最終的には「扇風機や雛人形を一度仕舞ったら二度と出さない場所」に変貌してしまいます。また、夏場に高温多湿になりやすい環境の場合、保管するもの(精密機器や衣類など)が傷む原因にもなります。

③個室ごとの「中途半端な大きさのウォークインクローゼット」

2〜3畳程度のウォークインクローゼットを、寝室や子供部屋にそれぞれ作ったケースです。

理由: ウォークインクローゼットは「人が中に入って歩くスペース(通路)」が必要なため、実は収納面積としては、壁面一面のシステムクローゼット(壁面収納)よりも効率が落ちることがあります。通路部分に面積を割かれる割にはモノがしまえず、部屋そのものを狭くしてしまう原因になります。

④階段下の「奥が低くて暗い収納」

デッドスペースの有効活用として定番の階段下収納ですが、計画性がないと失敗します。

理由: 階段の形状に合わせて奥に行くほど天井が低くなるため、中にかがんで入らなければならず、出し入れが苦痛になります。照明を設置し忘れて奥が真っ暗になり、何を仕舞った分からなくなるケースも後を絶ちません。

3.失敗例から学ぶ「収納計画」の盲点

なぜこれほどまでに収納の成否が分かれるのでしょうか。それには、間取り図を見ているだけでは気づきにくい「4つの盲点」があるからです。

盲点1:「収納の量(面積)」だけを見て、「位置(動線)」を見ていない

多くの人が「床面積の○%を収納にすれば大丈夫」という数値を基準にしがちです。しかし、どれだけ総量が多くても、使う場所から遠い収納は機能しません。モノは「使う場所のすぐ近く(1〜2歩以内)」に収納場所があって初めて、使った後に元に戻す習慣が生まれます。

盲点2:収納の「奥行き」をすべて同じに考えてしまう

収納するモノによって、最適な奥行きは全く異なります。

  • 文房具・書類・本・日用品ストック:20〜30cm
  • 洋服(ハンガー掛け)、家電製品:55〜60cm
  • 布団、布団キーパー、大型スーツケース:80〜90cm

大は小を兼ねると思って奥行きを深くしすぎることが、収納の使い勝手を著しく低下させる最大の原因です。

盲点3:「扉の開閉スペース」と「可動性」の検討不足

間取り図上で収納の四角い枠だけを見て安心し、扉を開けたときの周囲のスペースを考慮していないケースです。例えば、折れ戸や開き戸を開けたときに、近くの家具やドアに干渉して全開にできない、あるいは通路を完全に塞いでしまうといった失敗があります。また、内部の棚が固定式だと、収納するモノの高さが変わったときに柔軟に対応できません。

盲点4:「コンセント」の配置忘れ

現代の収納計画において最も見落とされがちなのが電気配線です。コードレス掃除機、ロボット掃除機、電動自転車のバッテリー、Wi-Fiのルーターなどは、収納の内部で充電・保管するのがスマートです。収納内にコンセントを設置し忘れたために、せっかくの隠す収納の利活用の幅が狭まるケースが増えています。

4.失敗しない収納計画を立てるための4つのポイント

これまでの成功・失敗の教訓を踏まえ、住宅設計の際に実践すべき具体的な手順を提案します。

ポイント1:現在の「持ち物の総量」と「サイズ」を測る

新しい収納を作る前に、まずは今持っているモノを徹底的に把握します。特に、スーツケース、ゴルフバッグ、布団、扇風機などの「大型かつ特定の時期しか使わないモノ」は、あらかじめサイズ(幅・奥行き・高さ)を計測し、どこに配置するかを間取りの段階で確定させておきます。

ポイント2:生活動線・家事動線上に収納を配置する

朝起きてから寝るまでの家族の動き(生活動線)と、洗濯・料理・掃除の動き(家事動線)を間取り図の上でなぞってみてください。「ここで上着を脱ぐ」「ここで洗濯物を畳む」「ここで子供が宿題をする」という行動のすぐそばに、それに適したサイズと形状の収納を配置します。

ポイント3:すべてを「可動棚」にし、奥行きを最適化する

内部の棚板は、原則としてすべて「可動棚(レール式で高さを変えられる棚)」にすることをおすすめします。ライフステージの変化によって収納するモノ(育児用品から部活の道具、大人の趣味のモノへ)は変わるため、柔軟性を変えられる構造が必須です。また、棚の奥行きは仕舞いたいモノに対して「ジャストサイズ」を意識し、無駄な深さを作らないようにします。

ポイント4:収納内部の「照明」と「コンセント」を標準装備する

奥行きが50cmを超える収納や、階段下・納戸のようなスペースには、必ず内部を照らす照明(ダウンライトやセンサーライト)を設置してください。また、スティック掃除機の充電用や、将来的な家電製品の保管を想定し、クローゼットやパントリーの内部には少なくとも1〜2箇所のコンセントを確保しておくことが、後々の利便性を大きく左右します。

まとめ:収納計画の本質は「暮らしの引き算」

失敗しない収納計画とは、単にモノを隠すための「箱」をたくさん作ることではありません。そこに暮らす人がどのような動きをし、何を大切にして暮らしているかという「ライフスタイルの視覚化」そのものです。

「とりあえず大きな納戸を作っておこう」という足し算の思考を捨て、「誰が、どこで、何を使い、どう片付けるか」という具体的なシーンを一つひとつ検証していく引き算と精査のプロセスこそが、数年後、数十年後も美しく、機能的で、家事負担の少ない住まいを実現するための確実な近道となります。間取り図の「収納」という文字に惑わされず、その中身と動線を立体的にイメージすることから、理想の住まいづくりを始めてみてください。

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